検査の概要
口から十二指腸まで内視鏡を挿入し、胆管・膵管の出口である十二指腸乳頭から検査の対象となる胆管・膵管の中にカテーテル(細い管)を挿入します。カテーテルから造影剤を注入し、膵管や胆管のX 線写真をとることで直接見られない管の中の腫瘍や結石、狭窄などを評価することが出来ます。同時に胆汁や膵液といった消化液を採取したり、病変部から組織や細胞を取って検査することで、癌などの診断も可能です。
胆管・膵管の検査として他にCT・MRI・腹部超音波検査があります。これらは内視鏡を使ったERCP に比べ患者さんの負担は少ないですが、精度の面ではERCP に劣ります。また組織や細胞の検査はがんなどの確定診断に欠かせません。当院では年間250件以上のERCPを施行し、検査・治療の成功率は96%以上と全国平均より高い成績です。
また造影検査に引き続き、内視鏡的治療を行うことが出来ます。
- 総胆管結石(胆管に石が落ち込む)の採石術
- 胆管や膵管のがんによる狭窄・黄疸に対するステント挿入(流れる道)
- 胆嚢炎に対するステント挿入ERCP の検査は通常30 分程度で終わります。
ERCP に引き続き総胆管結石治療やステント留置、ドレナージなどの治療を行う場合は更に30分程度の時間を要することもあります。またカテーテルの挿入が難しい場合などでは、検査時間が予定より長くなったり、検査がうまく出来ない場合もあります。
検査中は鎮静剤を用いて眠ったような状態で検査を受けて頂きます。検査当日は、食事はできませんが翌日異常がなければお食事を再開します。検査当日から翌日までは感染や急性膵炎の予防のため抗生物質・膵炎治療剤の入った点滴を行うこともあります。また当院では最新の透視機器HITACHIのEXAVISTAを用いて検査を行っており、X線の被ばく量も最小限に抑えております。
ERCPによる治療
すい臓がんや胆管がんなどによる閉塞性黄疸の検査・治療
内視鏡的ステント留置術
主にすい臓がんや胆管がんなどにより、胆管や膵管が狭窄(狭くなること)し、胆汁や膵液の流れが悪くなっているときに、ステントという管を入れて、胆汁や膵液の流れを良くする治療がステント留置術です。流れが悪いまま放置していると胆管や膵管に炎症を起こし、命に関わる場合もあります。ステントにはプラスチックでできたものとメタリック(金属)のものがあります。メタリックステントはプラスチックのものに比べ、太く拡張するため再閉塞しにくいものでがんに対して主に用いられます。
肝門部の胆管癌が出来ると胆汁の流れが途絶えます。
胆汁の流れを再開通するために内視鏡を十二指腸まで挿入し、胆管の出口である乳頭部から逆向きにワイヤーを挿入します。
狭くなった部分に金属のステントが入ることで胆汁の流れが再開通します。これにより痛みや炎症の症状が改善します。
総胆管結石治療
- 内視鏡的乳頭切開術(EST)
- 内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD)
- 内視鏡的採石術・砕石術
総胆管結石とは主に胆のうでできた石(結石)が総胆管に落ち込むことで痛みや発熱、黄疸の症状を起こす病態です。治療には結石を取り除く必要があります。十二指腸乳頭(総胆管の十二指腸への出口)を広くする必要があり、乳頭部を内視鏡を通して挿入した電気メスで切開したり、バルーン(小さな風船)を入れて短時間膨らませて乳頭部を拡張する方法があります。総胆管結石があった場合は拡張した乳頭から総胆管内にバスケット状のワイヤーやバルーン(風船)を入れて結石を十二指腸に引き出します(内視鏡的採石術)。結石が大きい場合は、特殊なバスケットカテーテルを胆管内に挿入して石を小さく砕くこともあります(内視鏡的砕石術)。
※適切な治療を必要に応じて検査中に行います。
合併症
ERCP後の合併症として最も多いものが膵炎です。検査後の膵炎は全体の2-7%、に起こるとされています。ほとんどは軽症の膵炎で数日間の入院延長で改善しますが、稀に重症化(0.3-0.6%)した場合には強い疼痛や多臓器不全や胆管炎を起こす可能性もあり、他にも十二指腸や胆管の損傷による出血、穿孔(穴があくこと)、腹膜炎などの重篤な合併症を起こし命に関わることもあります。
万一、副作用や偶発症が起きた場合には最善の処置・治療を行います。入院期間の延長や緊急の処置・輸血・開腹手術などが必要になることがありますが、その際の診療も通常の保険診療にて行います。当院では重篤な合併症は起きておらず安全に受けて頂ける検査となっています。