適応となる疾患
胆管がんやすい臓がんなどが進行すると下部胆管が狭窄し、閉塞性黄疸の状態になります。そのまま放置していると、痛みの原因となったり胆管炎という炎症を引き起こします。
本来は内視鏡的胆管膵管造影:ERCPにより内視鏡を用いて狭窄部位にステント(流れる道)を留置します。
ただし、腫瘍によって消化管が狭窄している方や消化管の手術をされている方、通常の内視鏡的胆管膵管造影:ERCPが成功しない方がおられます。これまでの方法では経皮的なドレナージしかできなかったため、そういった患者さんは外瘻(体に管が繋がれた状態)を常に体につけておかなければならない状態でした。
これによりがん患者さんの余命のQOL(生活の質)が著しく低下している状況でした。そこで開発されたのが超音波内視鏡下胆道ドレナージ術です。これまでの内視鏡治療とは違い、胃や十二指腸から胆管を穿刺し、ステントを留置することで体外に管を繋ぐことなく閉塞した胆管の治療が出来る方法です。
方法
ステントを留置する場所によって
- 胃-胆管瘻(EUS-HGS)
- 十二指腸-胆管瘻(EUS-CDS)
- 胃-胆のう瘻(EUS-GBD)
の3つの方法があります。がんの場所などによって適切な治療を選択します。治療時間は症例にもよりますが、1時間前後となっています。
胃-胆管瘻(EUS-HGAS)
1.
超音波内視鏡を胃に挿入し、拡張した肝臓内の胆管を観察します。穿刺ライン上に血管などがないことを確認した上で19Gの針を用いて胆管を穿刺します。
2.
胆管を穿刺後にワイヤーを十二指腸まで留置します。
3.
狭窄部にステントを留置することが可能な場合は順行性に金属ステントを留置します。
4.
穿刺した孔を拡張した上で金属ステントを胃内に留置し終了します。これで胃と胆管の間にステントという流れる道が出来ることになります。
十二指腸-胆管瘻(EUS-CDS)
1.
超音波内視鏡を十二指腸に挿入し、拡張した総胆管を観察します。穿刺ライン上に血管などがないことを確認した上で19Gの針を用いて総胆管を穿刺します。
2.
胆管を穿刺後にワイヤーを留置します。
3.
穿刺した孔を拡張した上で金属ステントを十二指腸内に留置し終了します。これで狭窄で流れなくなっていた総胆管から十二指腸への道が出来ます。
胃-胆のう瘻(EUS-GBD)
1.
音波内視鏡を胃もしくは十二指腸に挿入し、腫大した胆のうを観察します。穿刺ライン上に血管などがないことを確認した上で19Gの針を用いて胆のうを穿刺します。
2.
胆のうを穿刺後にワイヤーを胆のう内に留置します。
3.
穿刺した孔を拡張した上で金属ステントを十二指腸内に留置し終了します。狭窄で流れなくなっていた胆のうから胃や十二指腸への道が出来ます
合併症
- 気腹症(9%):治療中に腹腔内へ空気が漏れ出た場合を指しますが、一般的には経過観察のみを行います。
- 胆汁性腹膜炎(3%):抗生剤静脈投与等で保存的に加療します。重症の場合は手術やICU管理を行います。
- ステントが抜ける(2%):ステントの再挿入、経皮経肝的胆嚢ドレナージ術、緊急手術にて対応します。
- 腸管損傷(1%以下):絶食、輸液にて経過観察します。穿孔例では、手術療法を要する可能性が高いです。
- 出血(1%以下):輸血,内視鏡的止血術、腹部血管造影によるコイル塞栓術あるいは緊急手術を行います。
- 急性膵炎(8%):保存的に加療します。重症の場合にはICUにて管理が行われます。
これまでにない非常に有効な治療法であるとともに、合併症の可能性も高くなっております。上記のような合併症が予想され、全国的な報告として20-30%程度と報告されており、当院での成績も同程度となっております。