病名・症状一覧

がん

がんはわが国の死亡原因の第一位であり、年間30万人以上ががんで死亡しています。中でも消化器関連のがんはその多くを占めています。

胃がん

胃がんは局所に留まっている時期に発見できれば、がんを完全に除去して治すことができます。胃がんを除去する基本的な治療法は外科的手術ですが、より早期に発見されますと苦痛の少ない内視鏡治療でお腹を切らずにがんを完全に切除することが可能です。一方、がんが転移して全身に広がると切除できず抗がん剤治療や緩和治療しかできません。

日本は世界でも胃がんの発生頻度が高い国で、早期発見などの要因により胃がんの死亡率は低下傾向にあるものの、未だに年間5万人以上の日本人が胃がんで死亡しています。胃がんの原因には、ヘリコバクター・ピロリという細菌が関与していることが明らかになっています。 胃がんの症状には、上腹部痛や上腹部の不快感、体重減少、嘔吐・悪心、吐血・下血、食欲不振などがあります。胃がんは早期には症状がないことが多いので、40歳以上の人は積極的に検診を受けるようにしましょう。また気になる症状があれば積極的に検査を受けましょう。

当院では鎮静剤を使った患者様に負担の少ない検査を行っております。

治療

早期胃がん

内視鏡での治療が発達した現在では、早期で適応を満たせば内視鏡でがんを切除することが可能です。お腹を切らないので侵襲が少なく、痛みも殆どありません。1週間程度で退院が可能です。

進行胃がん

進行がんに対しては主に手術治療を行います。腹腔鏡によるがん切除を行っていますので通常の開腹手術より低侵襲で入院日数も少なくて済みます。病期や必要性に応じて抗がん剤治療を行います。

切除不可能進行胃がん

また切除ができないがんで胃の出口が塞がっている方には金属ステントを留置し、食事が摂れるよう治療を行います。

大腸がん

大腸がんは近年我が国で増加しているがんです。増加している要因としては、ライフスタイルの変化による運動不足や食の欧米化による肥満が指摘されています。

大腸がんの症状としては、血便や便秘、下痢、便が細い、お腹が張るなどがあります。このような症状がある場合は医療機関を受診して大腸の検査を受けることをお勧めします。しかし、大腸がんの場合も早期がんでは症状がないことが多いので、40歳以上の人は大腸がん検診や大腸検査を積極的に受けるようにしましょう。

胃がんと同様、早期がんであれば内視鏡でお腹を切らずに治療が可能です。進行大腸がんの治療法は外科治療、放射線治療、抗がん剤治療などがあります。大腸がんの治療は、がんの進行度(病期)に応じて治療が選択されます。

治療

早期大腸がん・20㎜以上のポリープ

内視鏡での治療が発達した現在では、早期で適応を満たせば内視鏡でがんを切除することが可能です。お腹を切らないので侵襲が少なく、痛みも殆どありません。5日程度で退院が可能です。

進行胃がん

切除可能大腸癌に対しては腹腔鏡によるがん切除を行っていますので通常の開腹手術より低侵襲で入院日数も少なくて済みます。病期や必要性に応じて抗がん剤治療を行います。

切除不可能進行胃がん

早期食道がん・咽頭がん

食道がんは、50歳以上の中高年の男性で特にタバコやお酒を好む人によくみられます。男性が女性の5倍程度多いことが知られており,この要因に喫煙や飲酒が関係すると考えられています.咽頭がんも同様の傾向が見られます。症状としては食事がつかえる、熱いものや冷たいものを飲み込んだ時に胸の奥がしみる、体重が減少する、胸が痛む、背中が痛む、声がかすれるなどがあります.しかし早期の食道がんは症状がないことが多いですので、50才以上の男性でタバコやお酒を好む人は軽い症状でも病院を受診して検査を受けられることをお勧めします。

当院では早期食道がん、咽頭がんに対し体にメスを入れず内視鏡で治療することが可能です。特に咽頭癌は県内でも施行できる施設が少ないので、治療が必要な場合はご相談下さい。

また切除できない進行食道がんに対しては抗がん剤治療や狭窄に対するステント留置が可能です。

十二指腸がん・腺腫

胃や大腸のがんと比べると頻度は非常に少ないですが、年間数例のペースで発見され、治療しています。前癌病変である腺腫、早期癌に関しては内視鏡での治療の適応となり、進行がんは手術となります。 十二指腸の内視鏡治療も県内で施行できる施設は少ないので、治療が必要な場合はご相談ください。

すい臓がん

すい臓がんは男性ではがんによる死亡の第5位で女性では第6位となっています。膵がんは40歳代から70歳代の中高齢者に多く発症しています。すい臓がんは大腸がんや肝臓がんと同様にますます増加すると考えられています。 膵がんは早期に診断することが困難ですし,膵臓周囲だけではなく遠く隔れた部位へも転移をしやすく,さらに化学療法や放射線治療が効きにくいことから治りにくいがん(難治がん)の代表で平成16年には22,260人がすい臓がんで死亡しています。 膵がんの早期の診断が難しい理由としては,膵がんに特異的な自覚症状が無いことが挙げられます。

膵がんの最初の症状としては腹痛と黄疸が多く見られます.その他,腰や背中の痛み,食欲不振,体重減少などがありますが,いずれも膵がんに特異的なものではありません。 早期発見がむずかしいすい臓がんですが、当院では平成27年より超音波内視鏡(EUS)を導入し、近隣医療機関からの紹介もあり、10㎜以内の超早期がん(TS-1a膵がん)を数多く発見し、早期の治療に至っています。すい臓がんになりやすい(超音波内視鏡をお勧めする)方にも積極的に検査を受けて頂いています。診断に関してもCTやMRIなどの画像診断に加え、ERCPによる膵液細胞診、EUS-FNABによる組織検査で微小膵がんの診断が可能です。

胆管がん

胆道がんとは、胆汁の通り道にできる悪性腫瘍であり、胆管がん・胆のうがん・乳頭部がんのことを指します。造影剤を使用したCT・MRIが中心になりますが、内視鏡検査(超音波内視鏡EUS、内視鏡的逆行性胆管膵管造影ERCP)が必要になることが多く、これらの内視鏡や超音波を用いた検査により組織採取を行い、確定診断を行います。また、胆管が閉塞することによる黄疸を合併しやすいため、これに対する処置が必要になることも多く、この場合も内視鏡や超音波を用いて黄疸の改善を図ります。

胆道がんの唯一の根治治療は外科切除です。癌の部位や広がり方により様々な術式が選択されます。外科切除が可能かは、患者さんの全身状態、癌の局所での進展状況、遠隔転移の有無から判断します。

胆のうがん

胆のうがんは胆汁を溜めて濃縮する袋である胆のうにできる悪性腫瘍です。頻度は少ないですが、肝臓への浸潤やリンパ節転移の可能性が非常に高いため進行の早いがんの一つでもあります。また積極的な検査をしなければ早期で見つけるのは難しいがんでもあります。

診断には造影剤を使用したCT・MRIが中心になりますが、内視鏡検査(超音波内視鏡EUS、内視鏡的逆行性胆管膵管造影ERCP)が必要になることが多く、これらの内視鏡や超音波を用いた検査により組織採取を行い、確定診断を行います。基本的には手術治療が原則となりますが進行度に応じて腹腔鏡手術か開腹手術かが変わってきます。

肝臓がん

ウイルス性/非ウイルス性肝硬変患者、C型/B型慢性肝炎の患者さんにおいては、肝細胞がん発症に対する定期的なクスリーニング検査(肝硬変では3-4か月毎の画像および採血検査、慢性肝炎では6か月毎の画像および採血検査)によって、小さく・早期に見つけることに重点をおいて行っています。

肝細胞がん診断における近年の進歩の一つに、新規MRI造影剤(Gd-EOB-DTPA)の導入があげられます。Gd-EOB-DTPA造影MRI検査は、ごく早期の肝細胞がんを診断し得る可能性が報告され、当センターにおける日常診療にも導入している検査法です。また、高性能の腹部エコー装置を導入して、腎機能障害やヨード造影剤アレルギーをお持ちの患者さんにおいても使用可能なエコー造影剤(ソナゾイド)などの新しい画像装置を導入し、診断治療にあたっています。

臓器別疾患(がん以外)

胃・十二指腸潰瘍

胃・十二指腸に潰瘍ができるとみぞおちの痛みや嘔気を伴います。これまで胃、十二指腸潰瘍は繰り返し再発することが多い疾患でした。潰瘍の原因の殆どがヘリコバクターピロリ菌によると判明してからは除菌治療をすることで再発のリスクはかなり減りました。

しかしながら、最近ではロキソニンなどの解熱鎮痛薬やバイアスピリンなどの血液をサラサラにする薬などの影響で潰瘍を作ることも少なくありません。潰瘍がひどい場合は血管が破たんし出血(吐血)を来すこともあります。症状がある場合は早めの検査が推奨されます。

萎縮性胃炎(ピロリ菌感染症)

萎縮性胃炎とはピロリ菌に感染した方の胃に特徴的な所見で、内視鏡医が見ればある程度の判断がつきます。ピロリ菌によって胃潰瘍や十二指腸潰瘍を発症したり、長年生息し傷んだ胃からは胃がんが発生します。またピロリ菌が生息していることで、胃の調子が悪いなどの症状が継続することもあります。

ピロリ菌は幼少期の井戸水摂取や親からの経口感染が感染の原因となります。1週間の除菌薬による内服で治療が可能ですので、心当たりの方はご相談ください。

逆流性食道炎

胃酸の逆流によって食道側の粘膜が傷んでおこる病気です。主に胸焼け症状や胃酸が上がってくる症状、病状が進行すると胸痛や吐血の症状を来すこともあります。原因は食生活の欧米化などにより、食道と胃のつなぎ目を絞める力が弱まるせいといわれています。胃酸を抑える薬の内服を続けることで症状は緩和されます。逆流症状や胸焼け・呑酸症状に心当たりの方はご相談ください。

機能性ディスペプシア

最近若い方を中心に問題となることが多い疾患です。特に食後に胃のあたりの膨満症状・食事が流れていかないような症状が主体となります。胃の不快な症状があるが内視鏡や腹部超音波検査では所見がない場合に疑われます。胃の運動能力の低下が原因と言われています。内服の治療により症状が軽減することも多いので症状に心当たりの方はご相談ください。

食道・胃静脈瘤、静脈瘤破裂

主に肝硬変などで門脈圧が上昇し、肝臓に流れるべき血液が食道や胃の方に流れることで静脈の瘤を形成します。圧力が更にかかる場合は破裂するリスクもあります。静脈瘤が出血した場合はかなりの勢いで出血するため、命にかかわることもあります。肝臓の病気をお持ちで上部消化管内視鏡検査を施行していない方はご相談ください。

急性胃粘膜障害(AGML)

急激なみぞおちの痛みを伴う疾患で、胃粘膜が出血を伴って障害される疾患です。原因ははっきりとしないことが多いですが、ストレスや薬剤によるものが多いとされています。ひどい場合は粘膜出血を来し、吐血の原因となることもあります。

感染性胃腸炎

ウイルスや細菌感染などにより、嘔気・嘔吐・みぞおちの痛み・不快感、下痢症状などが数日間継続する症状が代表的です。主に冬場に多いとされますが、年中起こる可能性があります。場合によっては重篤化することもあり、抗菌薬による治療が必要な場合もあります。症状がひどい場合は受診するようにしましょう。

アニサキス症

サバなど海外を遊泳する魚の生食後にみぞおちに強い痛みが出現した場合この疾患を疑います。アニサキスという寄生虫が胃の粘膜から胃内に侵入しようと潜り込むときに疼痛を伴います。内視鏡により駆虫する以外に対処法はありませんので上記の症状がある方は早めにご相談ください。

大腸(下部消化管)

腸閉塞(イレウス)

腸管の流れが途中で遮られることで食事が流れていかず腹痛、嘔吐症状を伴います。手術後の癒着が原因で生じる癒着性イレウスが多いですが、その他部位の炎症によって生じる麻痺性イレウスや小腸や大腸の腫瘍や狭窄により生じる閉塞性イレウスなどもあります。小腸が捻じれる絞扼性イレウスでは緊急手術を行わないと命にかかわるケースもあります。急激な嘔吐、腹痛症状が出現した場合はご相談ください。

大腸潰瘍

大腸に潰瘍を形成する病気で、痛みを伴わないことが多いです。主に直腸に多く、座薬などが原因となることもありますが原因がわからない場合もあります。ひどい場合は出血したり、腸管に穴が開く(穿孔)こともあるため、内視鏡により診断し適切に治療することが重要です。座薬を品要する方で赤い便が出るようなことがある場合ご相談ください。

大腸憩室出血

大腸内の圧力などで大腸粘膜に洞穴のような凹みができることがあります。このような病変を大腸憩室と言いますが、粘膜が引き延ばされており通常よりも出血しやすい傾向にあります。腹痛などの症状がないのに急に鮮血便がある場合にはご注意下さい。

虚血性腸炎

小さな血管が攣縮したり、詰まったりして一過性に大腸の血流が低下した際に粘膜の障害を来し、腹痛・下血の症状で発症します。ほどんどが左側の腸で起こるので左下腹部痛・下血の症状が出現した際はこの疾患を疑います。絶食輸液の内科的治療で良くなることがほとんどですが稀に壊死型虚血性腸炎では手術が必要になる場合もあります。

内痔核・外痔核

いわゆる“痔”です。内痔核は静脈の瘤のような病変であり、時に出血を伴います。外痔核は主に肛門外にできる病変で疼痛を伴います。 いずれの症状がある場合も内視鏡による精査並びに症状がひどいときは手術が必要になることもあります。

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病・ベーチェット病)

自己免疫性疾患が関与する主に腸管に炎症を引き起こす病気です。1日数回から数十回の下痢や下血、腹痛、発熱などが主な症状です。各疾患で炎症の広がる範囲や病状は少しずつ違いますが、内視鏡所見によりある程度の診断ができます。また生検による組織検査で確定診断がつくこともあります。どの疾患も直ぐに治療が必要な病気です。症状がひどい場合は必ず早めに受診しましょう。

感染性腸炎

ウイルスや細菌感染などにより、嘔気・嘔吐・みぞおちの痛み・不快感、下痢症状などが数日間継続する症状が代表的です。主に冬場に多いとされますが、年中起こる可能性があります。場合によっては重篤化することもあり、抗菌薬による治療が必要な場合もあります。症状がひどい場合は受診するようにしましょう。

虫垂炎

盲腸の先についている虫垂という細長い臓器が感染を起こしみぞおちから右下腹部の疼痛や発熱、ひどいときには穴が開いて腹膜炎を来します。内科治療が奏功する場合もありますが、基本的には手術治療が必要です。継続する右下腹部痛がある場合は早めに受診しましょう。

大腸憩室炎

大腸内の圧力などで大腸粘膜に洞穴のような凹みができることがあります。このような病変を大腸憩室と言いますが、粘膜が引き延ばされており通常よりも薄くなっています。この洞穴に便が詰まったりすることで感染を起こす場合があり、これを憩室炎といいます。早期に診断でき、絶食・抗菌薬治療ができる場合は重症にはなりませんが、炎症が強くなると憩室穿孔といって穴が開く場合もあります。その場合は緊急手術が必要になるため、原因のない腹痛を感じた場合は早めに受診するようにしましょう。

大腸ポリープ

消化管の粘膜から発生し消化管内に突出した組織をポリープと呼びますが、大腸がんの殆どは大腸の良性のポリープから発生すると考えられており、大腸ポリープを予防的に内視鏡治療で切除することが行われています。当院では基本的に大腸検査で見つかり、切除する必要のあるポリープはその場で切除します。基本的には外来で切除が可能ですが、20㎜を超える大きな病変に関しては特殊な方法内視鏡的粘膜切開剥離術:ESDで切除することもあります。

過敏性腸症候群

定期的な腹痛や繰り返す下痢や便秘の症状があり、大腸検査をしても異常がない場合はこの疾患の可能性があります。詳しい原因はわかっていませんが、ストレスや心理的な要素が強い病気と言われており、テスト前に緊張したりして腹痛があったり、下痢になったりするのもこの症状の一つと言われています。

ヘルニア

いわゆる“脱腸”です。鼠径ヘルニア・閉鎖孔ヘルニア・大腿ヘルニアなどの種類があり、隙間から腸が腹壁の外に出てしまうことを言います。症状がない場合は経過観察も可能ですが、穴に腸管がはまり込んでしまうとヘルニア嵌頓と言って緊急手術の適応になります。立った時や腹圧をかけたときに鼠径部が膨隆する症状のある方はこの病気の可能性がありますのでご相談下さい。

胆・膵疾患

胆のう結石

肝臓でできた胆汁という消化液を溜めて濃縮する臓器を胆のうと言います。胆汁の成分やコレステロール成分が固まって石ができた状態を胆のう結石と言います。無症状であれば経過観察も可能ですが、痛みを伴う場合は治療の対象となります。また管に石が詰まってしまうと胆のう炎という炎症を引き起こすこともあります。痛みは基本的に右肋骨下部に出現します。特に脂肪分の高い食事を摂取した後に起こることが多いです。症状がある場合は医師に相談しましょう。

基本的に治療は腹腔鏡手術となりますので、早ければ5日程度での退院が可能です。

胆のう炎

胆のう結石などが胆のうから流れでる胆汁という消化液が通る道胆のう管に詰まったり、その管がねじれたりする際に胆嚢に炎症がおこることを言います。胆のう炎の状態になると右肋骨下部に疼痛が発生します。ひどい場合は炎症が広がって腹膜炎になったり、胆のうが破れてしまうこともありそうなると緊急手術が必要となります。基本的に治療は腹腔鏡手術となりますので、低侵襲な治療が可能です。

総胆管結石・胆管炎

胆のうや肝内胆管の中でできた石が胆汁が十二指腸まで流れるメインの経路である総胆管に詰まると総胆管結石という状態になります。症状としては腹痛、背部痛が主体となりますが細菌が繁殖すると胆管炎という状態になり強い炎症を起こします。高熱がでたりひどい場合は敗血症性ショック(血流に菌が移行すること)になり、命に係わる場合もあります。総胆管結石は基本的には内視鏡で治療することが可能です。上記のような症状がある場合はすぐにご相談ください。

急性膵炎

多量飲酒や全述の総胆管結石、膵石などが原因で膵臓が炎症を起こすことを言います。膵臓で産生される消化液である膵液は脂質など実質を消化する役割になります。膵炎が起こると膵臓は自己融解(膵臓の消化液で膵臓自体を障害する状態)となります。症状は強いみぞおちから背部にかけての痛みが主体です。基本的には絶食、大量輸液、膵酵素を抑える点滴、抗菌薬などでの集中治療が必要になる可能性が高いです。多量飲酒後などにみぞおちの強い痛みがある場合はすぐに受診するようにしましょう。

慢性膵炎

長年の飲酒習慣や高脂肪食、遺伝性の要因などで膵臓が慢性的に障害される状態をいいます。膵臓が慢性的にダメージを受けると消化液である膵液の分泌量が減少したり、慢性的なみぞおちから背部の痛みがあったり、膵石(膵臓内や膵管内にできる石)ができたりします。また慢性膵炎の患者様は通常の方よりすい臓がんのリスクが上昇します。慢性的なみぞおちから背部の痛みがある方はご相談ください。

自己免疫性膵炎

主に自己免疫性の機序(自分の免疫機能が自分の臓器を障害してしまう)で起こる膵炎です。詳細は分かっていませんが、慢性・急性膵炎と同じような症状を呈することがあります。また膵管が狭窄し、膵液が流れにくくなることで痛みの症状を呈します。確定診断には膵組織の採取が必要になります。ステロイド薬の内服にて症状は著明に改善します。

膵石

主に慢性膵炎などがベースにある患者様の膵内に発生する石です。膵実質に発生する場合は症状は特にありませんが、すい臓で作られた消化液である膵液が流れる道である膵管に石が発生した場合は放っておくと急性膵炎になってしまいます。症状は膵炎などと同様にみぞおちから背部の痛みになります。膵石は内視鏡治療が可能です。

膵のう胞性疾患(IPMN・MCN・SCN・SPNなど)

すい臓にできる腫瘍性病変で、内部に液体成分を伴うもの全般を指します。粘液や漿液といった液体成分を産生する腫瘍細胞が増殖してできる疾患の総称で簡単に言えば中に液体を貯留した水ぶくれのようなものです。色々な種類ののう胞性疾患があり、中には悪性のポテンシャルが高く手術が必要になるものもあります。当院ではのう胞性病変のリスクを正確に把握するためのCT・MRI・超音波内視鏡:EUSなどを用いた総合的な診断・評価が可能です。検診などで指摘された場合は早めにご相談ください。

仮性膵のう胞

急性膵炎の際などに膵周囲に溜まった浸出液や漏れ出た膵液が炎症が鎮静化した後も腹腔内に貯留し、外側の膜を伴ってのう胞(水ぶくれのような状態)となることです。腹痛の症状が出たり、内部の液体が感染して発熱したりすることもあり、感染を来した場合は治療が必要です。昔は開腹して手術でのう胞を除去していましたが、現在は超音波内視鏡を用いた内科的治療が可能です。県内でもできる施設は限られていますので、診断を受けた場合はご相談ください。

肝臓疾患

急性肝炎

ウイルスや自己免疫などの機序で肝臓が急激な炎症を起こすことをいいます。通常は点滴などの治療で保存的に改善することが多いですが、劇症化すると救命率は20%前後と致死率の高い病気です。劇症化した場合は集中治療が必要になります。急性肝炎の初期症状は全身のだるい感じや軽度の黄疸です。早期に原因を突き止め処置することが必要となってきます。症状がある場合は早めに受診する必要があります。

慢性肝炎(B型肝炎・C型肝炎・アルコール性など)

一度感染した肝炎ウイルスが定着してしまうと軽い炎症が長期に起こり続ける状態となります。これを慢性肝炎といいます。長期に大量のアルコールに暴露された場合も同様です。炎症が起こっている状態を放置しておくと肝臓は障害と再生を繰り返し、徐々に線維化・硬化していき肝硬変という状態に近づき、肝不全や静脈瘤で命を落とす危険性がでてきます。またウイルス性慢性肝炎の場合はウイルスが再燃して急性肝炎となる場合もあります。また長期的な肝炎は肝がんのリスクにもなるため注意が必要です。原因に応じて抗ウイルス治療や肝庇護治療、定期的ながんスクリーニングなどが必要です。

肝硬変

慢性肝炎が進行した状態で、肝不全や静脈瘤・肝癌などの病気が併発しやすい状態です。またしっかりとした栄養管理をしなければ腹水(お腹の水)も貯留します。正しい栄養管理と内服薬などによる治療が必要です。

肝膿瘍

肝臓内に膿の溜まりを形成することを言います。原因は大きく分けて2つで腸管から胆管を逆行性に感染する場合(胆管炎などに併発する)とアメーバ赤痢菌に感染する場合があります。症状は右腹痛、発熱などです。抗菌薬治療で改善する場合もありますが、症状がひどいときは体外から膿瘍を刺し、管を入れてドレナージする必要がある場合もあります。

小腸疾患

小腸出血(小腸潰瘍・びらん・血管拡張症・腫瘍など)

新鮮血下血があり、大腸検査で症状が無い場合に疑います。昔は小腸内は見ることができず出血源を特定できないこともありましたが、現在は内視鏡の技術が発達して出血源を特定し内視鏡で止血することも可能です。原因不明の新鮮血下血がある場合はご相談ください。

炎症性腸疾患(クローン病)

前述のクローン病などが小腸内に狭窄などの病変を作ることもあります。病変の評価をしたり、組織の検査をしたり拡張術を施行することも可能です。